皆様こんにちは!アニオタです。本日は、2019年にアヌシー国際映画祭にてコントルシャン賞初代グランプリを受賞した、ギンツ・ジルバロディス監督の「Away」のレビューをいたします!
ネタバレもあります!最後までぜひ読んでいってください!
「Away」のあらすじ
少年と小鳥がオートバイで島を駆け抜ける。黒い精霊から逃れ、家へと帰るために──。スケールの大きな、澄み渡る大気を描いたような作品。まるでゲームの世界のような美しい映像体験へと我々を誘う。ラトビアの弱冠25歳(当時)の新星ギンツ・ジルバロディスが3年半をかけ全て一人で作り上げた初長編CGアニメ-ション映画。2019年度アヌシー国際アニメーション映画祭・コントルシャン賞初代グランプリ受賞作品。
dアニメストアより引用
映像について
今回は、ストーリーについてよりも映像について深掘りしていこうと思います!
オープンワールドのゲームのような風景
「Away」は、ギンツ・ジルバロディス監督が音楽、CG、映像編集等、すべて一人で制作した作品だそうです。制作期間は3年間。制作が一人と聞くと、初期の新海誠監督の作品を思い出します。
3DCGのアニメーションって、私アニオタのような作ったことのない人間からすると、一人で作るにはだいぶハードルが高い気がしますね・・・。人物や動物をモデリングするのも大変かと思いますが、あの広大な風景も自力で・・・と考えると、3年で制作は下手したら短いほうなのかもしれませんね。まずその根気が尊敬に値します。
さらに、その一人で制作したという風景のクオリティが高い!!雰囲気は最近のオープンワールドのゲームのような感じなのですが、360度どこを見ても美しい風景。これほんとに一人で作ったのか・・・。途方もないですね・・・。世界観も相まって、兄弟がプレイしているゲームを横から眺めているような感覚がありました。
実写のようなカメラの手ぶれ
先ほども述べたように今作は全編3DCGで制作されているのですが、カメラの動きに手ぶれのようなものがありました。
すーっと機械的な動きではなく手ぶれを加えることで、すべて人工的に作られた世界でも、ぬくもりといっていいのか、3DCGでも命を感じるような映像になっていた気がします。
映像で言葉を尽くす
今作は、一切セリフがなくストーリーが進行していきます。ですが、映像だけで何が起きているのかしっかりと把握できるんですよね。
例えば、黒い精霊に主人公が吸収されていた時の表現。産道や胎内のような脈打つ空間で、主人公が胎児のようなポーズをとっています。具体的な説明はありませんが、これが「生命が生まれる前の段階に戻っていっている、変異している(輪廻転生のような)」表現だと映像だけで理解できます。
また、黒猫の群衆に黒い精霊が近づいていくシーン。黒猫たちを一瞬吸収しますが、渦上の穴から水が噴き出るとたじろぎます。これは黒い精霊は死そのもので、水は黒猫たちにとって生命の源。生の塊の水に、死の具象である黒い精霊が逃げていたのかな、と推測できます(個人的な考察なので間違っていたらすみません)。
普通の映画などは、映像での説明もあるとは思いますが、ほとんどはキャラクターのセリフなどによって状況を説明しますよね。でも「Away」はあえてそこには頼らない。頼らないことで、映像での状況説明の表現に全力で挑んでいるように感じられ、ギンツ・ジルバロディス監督が映像づくりを心から楽しんでいるのがひしひしと感じられました。
「Away」の感想(ネタバレあり)
縛りによって生まれるロードムービー
今作は、主人公がバイクに乗って島(?)の中を移動します。実はこれ、ギンツ・ジルバロディス監督が作業削減のために取り入れた縛りなんだそうです。歩きや走りだとキャラクターの全身を動かさなければならないところを、キャラクターをバイクに乗せることで、作業的なコストを減らしているわけです。
ですが、この縛りによって、旅をし、主人公がこの世界の自然の厳しさを学んでいく、ロードームービーのようなストーリーが誕生したのです(いわゆるロードームービーの、キャラクターが成長する要素は、どちらかというと黄色い鳥がもっていっちゃってるかもしれませんが)。
なんとなく、縛りって表現に制限をかける枷って感じがしますが、ギンツ・ジルバロディス監督はそこをうまく生かす、臨機応変な対応が大変うまいなと思いました。
黒い精霊は何だったのか
飛行機事故から奇跡的に助かった主人公の少年は、偶然見つけた地図を頼りに、人里を探す旅に出ます。その少年を、黒い液体状の精霊がずっと追いかけてきます。
セリフがないので絶対これが正解とは言えないのですが、黒い精霊は「死そのもの」だったのかなと思います。
黒い精霊は常にいるわけではなく、何かあればもしかしたら主人公、またはその場にいる動物たちは死を迎えそうな状況の時に近づいてきます。途中周りを歩いていた動物が吸収されそのまま亡くなったシーンがありましたが、これはそもそもその動物の寿命が近づいていたのかなと思います。
また、先ほど書いたように黒い精霊に主人公が吸収されていた時や黒猫の群衆に黒い精霊が近づいていくシーンからも、黒い精霊が何者かがうかがえます。
整備された市街にいるのではく、死と隣り合わせの自然の中を移動している主人公をずっと追っていたことからも、黒い精霊は死そのものが顕現したものなんだと思います。
余談ですが、なんとなく黒い精霊のゼリーっぽい質感に既視感があったのですが、ギンツ・ジルバロディス監督、ジブリ作品を参考にしたそうで、よくよく考えると「もののけ姫」のデイダラボッチや祟り神みたいな雰囲気ですよね。ゲームの「ICO」や「ワンダと巨像」もお好きなようで、世界観はこちらの影響を多分に受けていると思います。
1番好きなキャラクターは「主人公の少年」
主人公の少年しか人物としていなかったのですが、繰り返しになりますが、私アニオタはかわいいものが好きなのですが、それと同じくらい主人公が好きです。それは、視聴者が一番感情の動きを感じることができるキャラクターは主人公だからかと思います。
今回は特に、セリフがないため、鑑賞者の感情が主人公にの得やすかったんじゃないかなと思います。鳥もいい味出してましたけどね!
「Away」はこんな人におすすめ!
- 新しい映像表現を見たい方
- オープンワールドゲームの風景が好きな方
- 独特の世界観のある作品をお探しの方
- セリフがないので、いろんな国の方が楽しめる
いわゆる週アニメのようなエンターテインメントのためのメディアとして作られた作品というよりは、鑑賞作品として作成された作品なので、アート関係の方が見るとさらに楽しめるのかなとも思いますが、セリフがないので老若男女、さまざまな国の方にもおすすめです!
さいごに
ご一読いただきありがとうございました!
今後も様々な作品のレビューをしてまいりますので、次回もよろしくお願いいたします!
今回紹介した「Away」は、以下から視聴可能ですので、ぜひ皆様も一度ご覧ください!
最後に、今回読んだギンツ・ジルバロディス監督のインタビュー記事も掲載しておりますのでこちらも読んでみると作品の理解が深まると思います!
こういう作品見ると、バイク乗ってみたくなりますね・・・!