皆様こんにちは!アニオタです。本日は、2008年にWOWOWで放送されておりました、湯浅政明監督の「カイバ」のレビューをいたします!
ネタバレもあります!最後までぜひ読んでいってください!
「カイバ」のあらすじ
記憶のデータ化ができるようになり、肉体の死がもはや死と呼べなくなった世界。記憶はデータバンクに保存され、新しい身体への「乗り換え」や、記憶の売買といったことが可能になり、違法に記憶を改ざん、記憶を盗むことも行われていた。社会は混沌とし、力を失い停滞化していた。そんな世界を主人公カイバは記憶を失ったまま宇宙の星々をめぐり、たくさんの人々と出会い、記憶を取り戻してゆく。
Wikipediaより引用
映像について
湯浅政明監督は、「四畳半神話大系」や「ピンポン THE ANIMATION」の監督として有名ですよね。私アニオタも、森見登美彦さんの小説が好きで、四畳半神話大系から湯浅監督を知りました。
湯浅監督の作品の特徴といえば、アニメーションのパース表現だと思います。現実ではありえないようなオーバーな遠近感を描くことで、それに合わせてキャラクターの動きがさらに大きくなり、アニメーションとしての面白さが増しています。「カイバ」の中だと、要所要所にオーバーなパース表現が取り入れられていますが、とくに第五話の「憧れの星アビパ」のCM(?)や多種多様なボディが映されている場面でよくわかるかと思います。
四畳半もピンポンも、パースすごかったんだよなぁ・・・。きれいなパースをとって描くのは、労力はものすごくかかりますが、基本をしっかりやれば意外と誰でも描けそうだと思うんですよね(「労力」ってワードの中にいろいろなものが凝縮されてますが)。でも、ちょっと雑な言い方になってしまいますが、「でたらめだけどありそうに見えるパース」って塩梅がすごく難しいと思います。参考にする定規がその人の中にしかないですからね。そう考えると、湯浅監督の頭の中はどうなってるんだ・・・って毎作品思います。
「カイバ」の感想(ネタバレあり)
記憶とボディが切り離せる世界
「カイバ」では、人の記憶を記憶チップに保存して、チップの差し替えをすることで体を乗り換えることができます。記憶は売り買いでき、より良い記憶、より良いボディを買うことができるのは富のあるものに限られます。ディストピアってこういうことを言うんですね・・・。人体をいじれるようになる世界はろくなこと起きないですよ・・・。
全話見た印象としては、記憶を蔑ろにしたキャラクターが悲惨な結果を迎えているように感じました(主にポポ)。現実世界で記憶(心とか魂)と体を別にすることができないので全く考えたことがなかったのですが、外見ってそんなに重要ではないのかもしれない。確かに、友人を外見だけで選んだことはないですね!
人付き合いの導入として、外見を整えることは有利に働くことも多いと思いますが、最終的には人柄や性格が重要なんだと、再認識させられました。
ワープから見る、環境が性格に与える影響
記憶の王であるワープは、大量のレプリカを作りますが、本来のワープの能力を持って生まれるレプリカは少なく、その数少ないレプリカの持ち主が今作の主人公のカイバです。記憶もワープの記憶を引き継ぐため、カイバは実質ワープそのもの。他の能力を持たないレプリカのワープは、能力持ちのワープの予備のような扱いでした。
記憶についてはレプリカはみな共通のものを持って生まれるわけですが、主人公のカイバ以外のワープレプリカは鬱屈とした性格でした。それは、根本はカイバと一緒であっても、カイバがいる限り王として君臨することが叶わないため、個人としてというよりは物のような扱いを受けてきた環境に原因があるのではないかと思います。
すべてが環境によって形成されるわけではありませんが、良い環境は良い人間を、悪い環境は悪い(不誠実な)人間を生みます。主軸とは違うと思いますが、「カイバ」では人の性格の成り立ちについても考えることができました。
様々な人生。悲しい結末・・・
「第3話 クロニコのながぐつ」「第4話 ばあさんの記憶の部屋」「第5話 憧れの星アビパ」「第6話 筋肉質な女」あたりまでは、一話完結で様々な人々の生き方を見ていきます。
個人的には、「第5話 憧れの星アビパ」に出てくるパッチとキルトの話がとてもよかったです。キルトの中に埋め込まれているチップは、とある研究者の女性のものでしたが、あまり記憶のキャパシティがないパッチの手助けを、パッチに気にされなくても続けます。「カイバ」の中では珍しく(?)とても思いやりのあるキャラクターです。無償の愛情って素晴らしいな・・・。
余談ですが、アビパでは食料が廃ボディから生成されて無料提供されていました。これを見たときに私アニオタは「ゼノギアス」を不意に思い出してしまいました・・・缶詰・・・。カイバも工場の様子を見て気持ち悪くなってましたしね・・・。
バニラは、『記憶に残らない男』ではない!
逃走中にキスしながらカイバの記憶チップを抜いた場面でのクロニコの表情よ・・・。クロニコのボディだからカイバの判断でこういうことはできないっていう、カイバの思いやりの結果なんだろうけど・・・なかなかバニラ的には悲しい・・・。
最期、バニラの中で作られた美しいクロニコと抱き合えてよかったね・・・本当に・・・。
君は決して記憶に残らない男ではないよ・・・みんなの記憶にしっかり残ったよ・・・。
記憶の改ざん
ヒロインのネイロは、ポポ、チェキとともに所属していた一想団が操りやすいように記憶を改ざんされていました。改ざんによりワープを憎み、記憶タンクの破壊を遂行します。
改ざんされた後の映像、個人的には結構怖かったんですよね・・・。真っ黒い顔が上塗りされた思い出も、両親が亡くなった理由の捏造も・・・。両親のほう、笑顔の顔のまま串刺しになってましたよね・・・夢に出てきそうなくらい不気味だと思いました・・・。
この記憶の改ざんは、完璧に消し去るのとは違って、上塗りでごまかしてるだけで後々ネイロは記憶を取り戻します。チェキの記憶は、改ざんというよりは売り買いの際の抽出するのと一緒で完全に削除って感じだったんですかね。改ざんだったらあのあと、チェキも記憶を取り戻してくれることを切に願います・・・ポポに救いを・・・。
ひょーひょーとキチ
この二人の関係が何とも不思議で好きです。だいぶ極端に言うとキチはネイロのストーカーみたいなもんですが、結果的に信頼関係が築けていました(知らなかったからこそかもしれませんが)。
ひょーひょー、一応ヒロインでもあるのでもう少し感情がわかるようなシーンを入れてあげても良かったのかなとも思います。ずっとカイバと一緒にいたのはひょーひょーなのに、おいしいところは全部持ってかれちゃってますよね。もう完全に元のボディもネイロ(改ざんVer.)のものになっちゃってましたからね・・・。
「カイバ」全体を通して
この作品を通して、やっぱり、人は人として、生まれたまま、成長して、そして死を迎えるのが一番幸せなのかなと思います。「カイバ」の世界のような技術が生まれたとしても、それを実行してしまうことでよいことは何もないんだなと(元も子もない話になってしまいますが)。ネイロもポポもチェキも、サテもキチも、みんなが仲良く過ごせる世界線ってないのかな・・・。
そして、記憶こそが人間の心を形成する遺産で、かけがえのないものなんだなと痛感しました。
一番好きなキャラクターは「クロニコ(カイバ入り)」
クロニコのボディに入ったカイバが一番お気に入りです。クロニコも、純真でとても好きなんですが。
カイバが入ったクロニコは、行動が小悪魔っぽいです。これはボディの可愛さわかってやってますよね・・・。先述したように、バニラへの対応はだいぶ辛辣でしたが・・・それもまた良し!外見は女の子だけれど、中身が男の子で、そのアンバランスさが生んだ可愛さという感じがあります。
キャラクターのデザインもすごくかわいいですよね。このロップイヤーみたいな被り物も、被り物を取った後のロングの髪形も好きです。ウサギはとても好きです。
なんだかキャラクターの中身よりも外見ばかりになってしまいました。主人公の「カイバ」の声は桑島法子さんが担当なさっているのですが、男の子の状態でも、女の子の状態でもマッチした声で、このキャラは桑島法子さんにしかできないと思いました。
「カイバ」はこんな人におすすめ
- じっくりと生き方について考えたい人
- 話が複雑なので、考察が好きな人
- 数多の鬱展開に耐えうる方
- かわいいキャラクター・イラストが好きな方
かわいい見た目とは裏腹に、だいぶ重ための内容ですので、ご覧になる方は心してお挑みください・・・!何度も見てじっくり考えると見えてくるものもあるかもしれないです。
さいごに
ご一読いただきありがとうございました!
今後も様々な作品のレビューをしてまいりますので、次回もよろしくお願いいたします!
今回紹介した「カイバ」は、以下から視聴可能ですので、ぜひ皆様も一度ご覧ください!
「カイバ」って、調べ方が悪いと社長が出てきちゃいますね・・・。